月曜日に、ファイザー(PFE)が自社で開発中のコロナウィルスワクチンについて「90%以上の予防効果が得られた」と発表しました。このニュースを受けて、株式市場は全体的に上昇したのですが、その中には暴騰した銘柄もあれば下落した銘柄もあります。
S&P500ヒートマップ2020年11月9日
2020年11月9日のS&P500ヒートマップ

金融セクターのJPMやBAC、エネルギーセクターのXOMやCSVといった銘柄は10%を超える上昇。
ホテル業界など旅行と収益が結びついている銘柄も大きく上昇しました。
反対にAmazonやZoomなどコロナ禍が追い風になっている銘柄は下落しましたね。

この日の相場は興味深かったです。コロナ禍の恩恵を受けている銘柄、打撃を受けている銘柄等、市場がそれぞれの銘柄をどのように評価しているのかが垣間見えました。

この記事ではワクチンのニュースで興味深い値動きを見せた銘柄を、独断と偏見でピックアップして紹介します。

石油企業:原油価格の上昇で直接的な恩恵

エクソンモービル(+10.8%)、シェブロン(+12.9%)など、オイルメジャーは軒並み暴騰しました。エネルギーセクターは今回のコロナ禍で最も影響を受けたセクターであり、反発は当然と言えば当然ですが、業績回復の期待から株価が上昇するだけでなく、今回の変動によって企業の実際の業績にも好影響が及ぶという点で、石油企業はユニークです。

なぜなら原油価格が上昇しているからです。原油価格は週明けの37.43ドルから15%も上昇し、水曜日現在42.89ドルになっています。原油価格はオイルカンパニーの利益に直結します。15%の上昇は十分なキャッシュフローを確保するのに苦慮しているこれら企業にとって、例えるなら乾季に降る雨のようなありがたみがあるのではないでしょうか。

関連記事:苦境にあえぐエクソンモービルのキャッシュフローについて分析しています。

アボット・ラボラトリーズ(ABT):コロナ関連の売上を除くと、やや割高か

アボット・ラボラトリーズ(-6.4%)は大きく下落しました。少し前に発表された7-9月期決算は売上高が前年比+9.6%と好調でしたが、現在の株価水準でABTに投資するのはやや危険だと個人的には考えています。

アボットが発表したガイダンスによると、2020年の調整後EPSは3.55ドル。現在の110ドルという株価で考えると、予想PERは31倍。フェイスブックやグーグル並みのバリュエーションですね。それに加え、今四半期はコロナウィルス検査キットの売上が9.8億ドルで、全売上高の10%近くを占めました。パンデミックが収束すればこの検査キットが要らなくなる(すぐにはそうならないでしょうが)ため、売られました。

アボット・ラボラトリーズとともに、コロナウィルス検査関連で大きな売り上げを出しているのがサーモフィッシャー・サイエンティフィック(TMO)です。こちらも月曜のニュースを受けて大きく下落しています。

参考資料:Bloomberg:Covid-19 Tests Are the Real Pandemic Moneymakers

コカ・コーラ(KO):コーラは家で飲むものではない?

コカ・コーラ(+6.7%)も大きく値上がりしました。以前どこかで読んだ記事に書いてあったのですが、コーラがどこで飲まれているかというと、飲食店だそうです(自宅で飲む人ももちろん多いでしょうし、それ故コロナ禍で下落こそすれ暴落はしていないわけですが)。そのため今年の3月以降、KOの株価は低迷していましたが、月曜の上昇も含め最近は好調です。一方、ペプシコは今回あまり値上がりしませんでした。飲料主体のコカ・コーラとは異なり、スナック菓子なども売っているからでしょうね。

関連銘柄としては、スターバックス(+7.4%)も上昇。これはわかりやすいですね。

アルファベット(GOOG)はあまり動かなかった

他のIT銘柄が値下がりする中、グーグルの親会社アルファベットの株価はプラスに推移。そもそもパンデックが本格化した3月以降、アップルやアマゾンなどの株価がグングン上昇する中、アルファベットの株価はあまり伸びず、他のIT銘柄に後れをとっている状況でした。これはアルファベットの主な収入源である広告売上がリセッションの影響を受けたためで、例えばアマゾンのようにパンデミックが追い風になってくれることがなかったからです。

逆に言えば、ワクチンの完成によってボーナス期間が終わるわけでもないため、月曜日は他のIT銘柄のような売りを浴びせられることもありませんでした。