マイクロソフトは2010年代のS&P500をけん引した銘柄です。
2011年に$25ほどだった株価は、現在$200を超えています。

最近はOfficeのサブスクリプションサービス、およびクラウドサービスのAzureが好調ですね。特にAzureの成長率はすさまじいです。ただ、これら好調な事業がマイクロソフトの業績にどの程度影響を与えているのかは、定量的に分析してみなければわかりません。

今回は、FY2019の決算書からマイクロソフトの事業を分析し、その上で2025年までの業績、株価を考えてみます。
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マイクロソフトの事業

マイクロソフトは事業を3つのセグメントに分割しています。
・Productivity and Business Processes:オフィスソフト、LinkedINなど
・Intelligent Cloud:AzureやGithub
・More Personal Computing:Windows、Surface、ゲームなど

これらセグメントの売上高はもちろん決算書に書かれています。しかし、それより細かいデータ、例えばSurfaceの売上高はいくらか、までは書かれていません。ただ、売上高がいくら増加したか、それが前年比何%の増加か、というデータが決算書には記載されているので、ここから各項目の売上高を計算することができます。2019年のAnnual Reportをもとに私が推計した結果を以下に示します。*これは一個人投資家が考察した結果にすぎず、事実と異なる可能性がありますのでご注意ください。
MSFT_Segment_Revenue
Productivity and Business Processes部門ではLinkedInの成長率が高いですね。しかし、最も売上高が大きいオフィス・コマーシャルの1/4ほどの規模です。よって、マイクロソフト全体の売上には(現時点では)あまり寄与していないことがわかります。

Intelligent Cloud部門は年21%成長しています。それを支えるのが「サーバー製品およびクラウドサービス」で、Azureがここに含まれています。このカテゴリーは売上高が高いにもかかわらず年率25%という高い成長を記録しています。利益率も高いでしょう。マイクロソフトの屋台骨と言えそうです。

More Personal Computing部門ではSurfaceとゲームの2カテゴリーが高成長です。ただし、この2つのカテゴリーは成長にムラがあるように思います。この部門の売上高の半分ほどを占めるWindowsは年4%成長と、マイクロソフトの中では比較的低い成長率です。


今後の事業見通し
■Officeについて
Officeのサブスクリプションへの移行が成功し、Productivity and Business Processes部門の売上は伸びています。今後も勢いは続くでしょうか。

こちらのサイト
にOffice 365のアクティブユーザー数のグラフがあります。2019年3月までと少し古いですが、順調にユーザー数が増加していることがわかります。

サブスクリプションへの移行に伴う特需にはいつか終わりが来るでしょうが、それはもう少し先のようです。

■Azureについて
現在猛烈な勢いで成長していますが、それが長期にわたって続くのはさすがに無理があるように思います。それでも、以前行ったクラウドサービス市場の調査によると、Azureを含むIaaS(Infrastructure as a Service)は年率23.3%ものハイスピードで成長するとのことです。



こうした点を踏まえると、マイクロソフトが今後も高い成長率を維持できる可能性はそこそこあると思います。とはいえ、変化の激しいIT業界のことですから、できるかもしれない、ぐらいに思っておいたほうが良いかもしれません。

業績予想
以上の考察をもとに、マイクロソフトの2025年までの業績、株価を考えてみたいと思います。

現在の成長率を今後も維持するケースを①高位予想とします。高い成長率が維持されるので、PERも2019年度末の30倍のままと考えます。楽観シナリオです。

もう一つのケースを②低位予想とします。成長が減速し、2025年までに現在の半分ほどの成長率に落ちた場合を仮定しています。つまり、2020年代前半にサブスクリプションへの移行が完了し、またクラウドサービスも成長ピークを過ぎると想定する悲観シナリオです。成長率の見通しが下がるのでPERもそれに伴い20倍まで低下すると見込みます。

具体的には以下の成長率推移を想定します。
MSFT_Segment_Growth_Forecast

結果
MSFT_Price_Forecast

このシミュレーションでは、現在の成長率を維持すれば株価は2025年までに400ドルへ接近し、逆に成長率が半減すれば株価はほぼ変化しないという結果になりました。

低位予想からは、PERが株価に大きな影響を与えることが見て取れます。売上高が伸びていても、バリュエーションが30→20に落ちると株価がほとんど上昇しません。

最後に
FY2019の決算書から、マイクロソフトの将来について考えてみました。上記では楽観シナリオのPERを30倍と想定しましたが、2020年9月28日現在、MSFTのPERは36.80です。このバリュエーションでの投資が報われるためには、相当良い業績が求められていると言えるでしょう。

ただ、上記では新たなビジネスが登場することは想定していません。そのようなイノベーションがどんどん生まれるのがハイテク業界の魅力の一つではあります。

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