2021年1月頃に新たな投資資金を約50万円用意できそうです。
その資金を使って購入する銘柄は「長期保有に適した配当成長株」にしたいと考えています。
この記事では、その候補である5銘柄(PEP / MMM / LMT / JNJ / MRK)の比較検討を行います。
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銘柄選択の基本方針

今回はポートフォリオのバランスを考えて「長期保有に適した配当成長株」に投資することにしました。考えたことは以下の通りです。

①グロース株は一休み
2020にはグロース株をいくつか購入し、それらの保有割合がかなり増えて来ました(私がグロース株に位置付けるのはAmazon、Facebook、Alphabet、Visa、Starbucksで、これらの時価総額が400万程)。ある程度、かつ急速に増えたので、今回はグロース株以外に投資したいと考えました。

②安心して保有できる銘柄が欲しい
現在の保有銘柄を見るとアルトリア(MO)、エクソンモービル(XOM)、アッヴィ(ABBV)と割安、高配当なものの先行きが不透明な銘柄が多いです(MOは喫煙者数の減少、XOMは再生エネルギーへの転換、ABBVは特許切れというリスクがそれぞれあります)。そのため、次の投資は将来の事業リスクが低く、安心して見ていられる企業を選びたいと思います。

③配当利回り2%後半以上でしっかり増配
今回の投資では配当をしっかり積み上げたいと考えています。同時に、将来の増配とのバランスも取りたいと思います。具体的には、配当利回りがある程度高く(2%後半以上)、かつ毎年5%以上の増配が期待できそうな銘柄が理想です。

候補は次の5銘柄

以上の基本方針を基に、とりあえず配当利回りを見ながら、上記の基準を満たしそうな次の5銘柄を選びました。

<企業名:業種 …配当利回り>

1. ペプシコ(PEP):食品・飲料 …2.84%
2. スリーエム(MMM):化学・電気素材 …3.32%
3. ロッキードマーティン(LMT): 航空・宇宙・防衛 …2.75%
4. ジョンソンエンドジョンソン(JNJ):ヘルスケア …2.81%
5. メルク(MRK):製薬 …3.25%


JNJ、PEPはすでに保有。特にJNJは200万以上保有していますが、良い投資対象だと判断した場合はさらに買い増すつもりです。

業績、事業内容の比較

選定した5銘柄について、業績や事業内容などから比較を行っていきます。

長期リターン

まずは1986年~2020年のトータルリターンを比較します。
TotalReturn_PEP_MMM_LMT_JNJ_MRK
(ソース:Portfolio Visualizer

どれもS&P500を上回っており、良い感じです。中でもPEP、JNJのリターンは優れています。

業績・指標

続いて各銘柄の最近のパフォーマンスです。
PEP_MMM_LMT_JNJ_MRK_table
(ソース:Morningstar & Market Beat

EPSは参考程度に留めたほうが良いと思います。それは、一時的な要因で増減するからです。そのため私は、EPSについては投資情報サイトに表示されている会計上のEPSではなく、年次報告書などに記載されている調整後EPSを見るべきだと考えています。ただ、それは個別株分析で行い、この記事ではそこまで踏み込まないことにします。配当性向についても同様の理由で、EPSベースではなくてキャッシュフロー(CF)ベースのものを使っています。

以下、各銘柄について感じたことです。

PEP:成長率の割にPERが高く、割高。

MMM:成長率が低い。高い増配率は期待できないかもしれない。PERも割安とは言えない。

LMT:売上高が伸びており予想PERも低くて良い感じ。営業利益率がこの中では低いのが気になる。低い営業利益率は厳しい競争に晒されていることを示す場合があるため。だが、米政府御用達の企業であることを考えるとある程度市場を独占できているはず。

JNJ:バランスが良い。そこそこのPERで、それなりの売上成長率。利益率が高いのも良い。

MRK:PERが最も低い。営業利益率も高い。ブロックバスターの抗がん剤キイトルーダが寄与する部分が大きい。つまり特許切れリスクがある。

配当性向はどれも正常で今後も増配が期待できそうですが、PERや成長率を考えると合格点を与えられるのはLMT、JNJ、MRKの3社だと判断しました。

事業の成長性

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今後事業が伸びるかという点について考察していきます。

PEP:△ 2011年以降、売上高がほとんど変わっていない。

MMM:△ PEPと同様に、ここ10年間の売上高があまり伸びていない。

LMT:△~〇 F35の受注が好調で2015年以降は伸びているが、2011年から2014年にかけては売上高が減少し続けていた。開発サイクルの影響を受けるため右肩上がりではない。中国の台頭に対応するため米国の国防費は今後も増加を続けるのではないかと予想されるが、防衛白書によると、物価を考慮した米国の軍事費は意外にも10年間ほぼ変わっていない。とはいえ、米国が中国の台頭に対して何もしないとは考えにくいので、今後変化があるかもしれない。

MRK:〇 キイトルーダが好調で業績が伸びている。特許切れは2028年

JNJ:〇 直近10年を通して着実に成長してきた。ヘルスケアセクターは今後も成長が期待できる。

PEPもMMMも、長期リターンがS&P500を上回っている実績があるので、またどこかで成長軌道に乗せてくるのかもしれませんが、現時点では売上高が伸びていません。

事業の安定性

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事業を脅かすリスクがないか考察していきます。

PEP:△~〇 健康志向による炭酸飲料離れ(ただし、スナック部門の比率が大きいためコカ・コーラに比べれば影響は少ない)

MMM:〇 特になし

LMT:△ 前述の通り、開発サイクルの影響を受ける。また、プロジェクトの一つ一つが大規模なので開発に失敗した場合の損失は計り知れない。主要顧客が米国政府であり、政府の意向次第で事業環境が変わるリスクがある。地政学的な観点では、中国の失速などにより米国の覇権が維持され軍事費が削減されるシナリオはなくはないが、今後10、20年内にそうなる可能性は低そう。むしろ軍事費が増加する可能性のほうが高い。

MRK:△~〇 キートルーダの特許切れまでに新薬を開発できなければ売上が低迷する恐れあり。ただし、これは製薬会社の宿命であり、これまで乗り越え続けてきた事でもある。また米国では薬価引き下げを求める声もあり、これもリスクになっている。尤も、MRKやJNJはグローバルに事業を行っているが。

JNJ:〇 薬価引き下げリスク。ただし、JNJの事業は多角化しており、製薬事業は全体の売上の50%ほどであるため、MRK以上に影響は限定的。またベビーパウダーへのアスベスト混入、そして米国で社会問題になっているオピオイドの訴訟リスクがあるが、これまでのところ大きな脅威にはなっていないように見える。


結論

1位:JNJ
2位:MRK
3位:LMT
4位:MMM
5位:PEP

JNJにはスキがありません。どの指標、視点においても優れています。

MRKはバリュエーションの点では最も魅力的です。少し遠い将来にキイトルーダの特許切れリスクがありますが、もし乗り越えられればJNJを超えるリターンを手にできると思います。それに、見方を変えれば、2028年までは盤石だともいえますし、この期間は素晴らしいリターンを生み出すのではないでしょうか。

LMTも今が買い時だと思いますが、国際関係(主に対中政策)という自分たちではどうにもできない要素に左右されるという点で、長期保有においてはJNJ、MRKの後塵を拝するという認識です。

MMMは成長率が低いため今回は低い評価になりました。長期リターンが他4社に劣る点も気になります。しかし、事業の安定性という点ではJNJと並んでこの中では2トップだと思います。バリュエーションの改善や成長率改善の兆候があれば購入候補に入ってくる銘柄です。

PEPももちろん良い企業なのですが、PERが高すぎると感じます。予想PERが24倍もあるなら、少なくとも1桁台後半の成長率がほしいところです。