以下の記事にあるように、為替は短期的には投機筋の影響を大きく受けます。輸出入の金額より投機・投資的活動に係るの金額の方が圧倒的に大きいからです。



それでは、投機筋が円を売っているのか、買っているのか確認する方法はないのでしょうか。もちろん世の中のすべての動きを把握することは困難ですが、売り・買いの方向性とその強さを大まかに把握することは可能です。その方法とは、シカゴIMM通貨先物ポジションを確認することです。

シカゴIMM通貨先物ポジションとは

以下、引用します(引用元:IMMポジション推移 | フィリップ証券株式会社|アジアを代表する総合金融グループ。 (phillip.co.jp))。
IMMポジションとはシカゴ・マーカンタイル取引所の国際通貨先物市場に上場されている通貨の建玉明細のことです。各取引所は米商品先物取引委員会(CFTC)に毎週火曜日の取引終了時点の建玉明細を報告します。CFTCは各取引所の建玉明細を集計し、当該週の金曜日の取引終了後にHP上で公表します。建玉明細の大口玉は報告義務があり、投機玉と商業玉に分かれ、特に、市場参加者は投機玉の建玉明細に注目します。建玉明細は買いの建玉-売りの建玉で計算され、プラスであれば、ポジションはロング、マイナスであれば、ポジションはショートとなります。例えば、円の買い建玉が 60,000枚で、円の売り建玉が50,000枚とすると、円ロングの10,000枚となります。(60,000-50,000)=+10,000この例ですと、円のポジションが10,000枚ロングに偏っていると把握できます。多くの市場参加者は、この数字を市場全体における投機筋が保有しているポジションの縮図と推測しています。このポジションの偏りを把握することにより、市場参加者は次の三つの推測をします。

1.投機筋の相場観は強気か弱気かニュートラルか推測できる。

2.ポジションの偏りの大きさから、ポジションの巻き戻しが起こったときのインパクトを推測できる。例えば、円のポジションが大きくロングに偏った時に、円ロングの巻き戻しが起こると、円ロングの保有者の多くは、こぞって円ロングを手仕舞う行動に出て、ロスカットがロスカットを呼ぶような状況になり、相場が大きく動くことが推測できる。

3.ポジションが大きく偏ると、利食いを入れる市場参加者が相対的に多くなるので、偏ったポジションを持っていても相場が有利に動きにくいと推測できる。

円ポジション(2015~2018)

投機筋の動きと為替がリンクしている例として、2015年~2018年が見やすいです。
Chicago_yen_2015-2018

オレンジで囲った範囲では、投機筋が円売りから円買いに転じており、それに伴って為替が円高方向に動いています。

緑で囲った範囲はその逆で、投機筋が円買いから円売りに転じており、それに伴って為替が円安方向に動いています。

円ポジション(直近)
Chicago_yen_recent

さて、直近はどうなっているでしょうか。20221年半ば頃に円買いから円売りにポジションが変わっています。しかし、円安が加速した2022年において、円売りポジションは継続こそしていますが、為替に対応するほど膨らんでいるようには見えません。

とすれば、円を売っているのは投機筋ではない実需関係の者か、あるいは投機筋であってもシカゴ・マーカンタイル取引所の記録には表れてこない者かという話になります。いずれにしても、このシカゴIMM通貨先物ポジションのデータだけで為替の動きを説明することは不可能であり、あくまで為替に影響を及ぼす条件の一つとして位置付けるべきでしょう。

長期投資家が留意すべき点


上の引用の部分でも指摘されていますが、ポジションの偏りの大きさは参考になる情報だと思います。それが解消された際に為替が逆方向にどれだけ強く進むのかが、(はっきりではありませんが)何となく掴めるからです。今現在で言えば、円売りに大きく傾いているため、このポジションが円買いになった際には、為替が大きく円高に振れる可能性が示唆されています。。