パウエル議長が債券購入のテーパリングを2021年内に始める可能性があると述べました。コロナ禍で米国は金融緩和を実施し、その結果FRBのバランスシートが大きく膨れ上がったということは良く報道されていますが、今回はグラフで改めてその状況を確認しようと思います。

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FRBのバランスシート(ソース:Brookings

コロナ禍で4兆ドルから8兆ドルに倍増しました。10年前と比べるとおよそ4倍になっています。確かに「膨れ上がる」という表現が適切に思えるような拡大っぷりです。

青色がTreasuries(国債)です。この部分が増えています。黄色は住宅ローン担保証券と政府機関債。

なお、パウエル議長は利上げは当面実施しないことも述べています。また、インフレ率の上昇は一時的なものであるとの認識を示しています。

テーパリングが実施されるとどうなるか
2013年の「バーナンキ発言」を振り返ります。当時のバーナンキFRB議長がテーパリングの実施を示唆したことで、金利が急上昇しました。
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量的緩和を縮小すると理論的には金利が上がりますが、問題は市場がそれを織り込んでいるかです。上記の「バーナンキ発言」は金利上昇が予期されていなかったため、市場が動揺し金利が上昇することになりましたが、今回は多分(大方の見方では)市場がテーパリング(や金利の引き上げ)をすでに織り込んでいて、実際にテーパリングの実施が決定したとしても何も起きないのではないかと思われます。

金融政策正常化はいつになるやら
中央銀行としては次のリセッションに備え、緩和余地を作っておくためにも、速やかにテーパリングを進めたいところですが、今の経済を支える必要もあるというジレンマに悩みます。上のグラフを見てもリーマンショック以降は買い入れを停止するのが精いっぱいで、バランスシートの縮小は2018,2019年にちょっと行われただけです。

健全なバランスシートになる見通しは全く見えません。それがどのような影響を及ぼすのか。私には正直わかりませんが、著名投資家の何人かは悲観的に見ているようです。

ジム・ロジャーズ「債権バブルはあらゆるバブルと似ているが、これまでで最も酷いバブルだ。」

レイ・ダリオ「景気サイクルは大停滞(great sag)の状況になる。金融危機は起こらないかもしれないが、経済は長期停滞に入るだろう。」

JPモルガンのマネージャー「これだけの紙幣を印刷し、バランスシートに何兆ドルもの証券を積み上げていれば、ある時点で何かが壊れるということだ。」