今年夏ごろに『テンプルトン卿の流儀』を読みました。読んでよかったと思える本でした。

テンプルトン卿の投資手法もバリュー投資に分類されますが、本書はバフェット関連本とは視点がやや違います。バフェットについて書かれた本は、個別銘柄の分析や、各銘柄が個別の要因で不調となっている時に安値で拾うことについて書かれていることが多いです。それに対して本書は、マーケット全体の暴落時を好機と捉え、周りが総悲観になっている時に勇気を持って行動することの大切さを説いています。恐らく、多くの方にとっては、馴染みがなく興味が出にくい個別銘柄を扱うバフェット本よりも、マーケット全体に対する姿勢について述べられている本書の視点の方が受け入れやすく、また実践しやすいのではないかと思います。

強気相場は悲観のなかで生まれ、懐疑のなかで育ち、楽観とともに成熟し、陶酔のなかで消えてゆく。」という名言を聞いたことがあるかもしれませんが、これは他ならぬテンプルトン卿の言葉です。

本書の著者はテンプルトン卿自身ではなく、兄の孫娘やテンプルトン・ファンドのマネージャーで、テンプルトン卿の伝記のような形になっています。

特にテンプルトン卿自身が述べた言葉には説得力があり、定期的に読み返したくなる良書です。というわけで、ここでは自分のメモも兼ねて、心に響いた言葉を以下にまとめます(太字はテンプルトン卿自身の言葉)。

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1. キャリアを通じて用いてきたひとつの原則は、悲観の極みで投資するということである。言い換えれば、悲観の頂点でこそ最も楽観的になる必要がある。

2. 日常生活のほぼあらゆる活動において、人は見通しが最も明るいところを目指す。将来有望な業界に職を求めるし、見通しが最良の地域に工場を建設しようとする。だが、上場された投資対象を選ぶ場合にはその反対を実行しなければならない。

3. 将来の強力な収益力を割安な価格で買えたときは常に良い投資と言える。それを実現する方法は他人が売っている時に買う以外にない。

4. 他人が絶望して売っているときに買い、他人が貪欲に買っているときに売るには、最高の精神的強靭性が必要となるが、最終的には最高の報いが得られる。


5. 人はいつも見通しが明るい銘柄はどれかと私に聞く。だがその質問は間違っている。本当は、見通しが暗い銘柄はどれかと聞かなければならないのだ。

6. いろいろな研究によれば人気株ばかり買っていると成績が市場平均を下回る。しばらく平均よりも良いことがあっても結局は失敗に終わる。

7. 本来の価値よりも安い株を一貫して買い続けるバーゲンハンターは、自分の行動が皆から承認や同意を受けないという状況に慣れる必要がある。不人気のものを買うには独立心をもち、自分の判断を信頼できなければならない。

8. 人よりもほんの少し余分に努力する気になれば正しい答えが得られる場合が少なくない。

9. (悲観の極みをどうやって見つけるかと聞かれて)100人のうち99人が降参するまで待てばいい。

10. 英語で最も高くつく四語は「今回は違う(this time it's different)」だ。

11. ウォール街に血が流れているときが最高の買い時


12. 最も優秀な投資家は強気相場でなく弱気相場の行動で決まる。

13. 平均的な投資家と偉大な投資家を分ける要因として最も重要なのは、天才的な銘柄選択ではなく他人が買わないものを買おうとする意欲である。

14. 群衆よりも良い成績を上げたいのなら群衆と異なることをしなければならない。

15. 
強気相場は悲観のなかで生まれ、懐疑のなかで育ち、楽観とともに成熟し、陶酔のなかで消えてゆく。悲観の極みは最高の買い時であり、楽観の極みは最高の売り時である。