SPXL、TQQQはそれぞれS&P500、Nasdaq100に3倍レバレッジをかけたETFです。下記のチャートを見るとわかりますが、景気拡大期には圧倒的なリターンをもたらします。

TQQQ_chart
SPLX vs S&P500

TQQQ_chart
TQQQ vs Nasdaq

この圧倒的なリターンを活用することで資産形成を加速させることができますが、何事も光あるところに影ありということで、今回はこのレバレッジETFに潜むリスクをご紹介します。一つは減価と呼ばれるものです。仕組みは様々なサイトで解説されているので、ここでは実例を紹介します。もう一つは投資家サイドにはどうすることもできない、ルール変更というリスクです。

今回は、エネルギーセクターのレバレッジETFであるThe Direxion Daily Energy Bull (ERX)と、そのベンチマークのXLEを使って説明します。 

※このETXは2020年5月までは3倍、それ以降は2倍レバレッジで運用さえれています。

減価の実例

レンジ相場では逆のレバレッジが働き、元の指数よりパフォーマンスが悪くなることがあります。例えば元の指数が10%上下した場合、1×1.1×0.9=0.99ですが、3倍レバレッジETFでは30%上下するので、1×1.3×0.7=0.91となります。これが減価と言われている現象ですが、以下のチャートではそれが実際に起きています。
ERX_case1

元の指数(XLE)が+31.80%に対してレバレッジETF(ERX)が14.09%となっています。ベンチマークが+30%なら3倍レバレッジは+90%ぐらい期待したいところですが、そうなるとは限らないというわけです。

以下はより悲惨な場合です。
ERX_case2
シェール革命によって原油価格が下落した2010年代半ばのチャートですが、インデックスがマイナス4%なのに対してレバレッジETFは-41%もの大幅下落となっています。


レバレッジ倍率が3倍→2倍になってしまった

先に説明しましたが、ERXは2020年5月に倍率を3倍から2倍に変更しました。そのタイミングが最悪でした。
ERX_case3

コロナショックで原油先物価格がマイナスになったことは記憶に新しいですが、そのどん底ともいえるタイミングでレバレッジ倍率が2倍になりました。そのため、その後の回復に伴って株価を上昇させることができませんでした。

WikipediaにDirexionのETFが載っていますが、倍率変更されたETFや精算されたETFが少なくないことがわかります。暴落後にETFの仕組みが変わったり、ETFが精算されたりしたら、こちらはどうすることもできません。

金融庁も注意喚起しているようです。

投資タイミングを見抜けるかどうか

最初の2つのチャート(SPLX, TQQQ)を見てわかるように、景気の底で投資できれば凄まじいリターンを得ることができます。しかし、言い換えると、景気の底を判断することと、その後低迷期ではなく回復期が来ることを見抜けなければなりません。

さらにETFのルール変更というリスクもあります。

まさに上級者向けのETFです。資産の一部を振り向けることはありだと思いますが、少なくとも景気後退を待ってからの方が良いのではないかと個人的には思います。