今、アメリカのお金持ちは節税のためにBuy, Borrow, Die Strategy(買って借りて死ぬ戦略)なるものを活用しているそうです。どんな戦略かというと、

1. 株や不動産などの資産を買い、
2. それを担保にお金を借りて、
3. 借りたお金で生活し、
4. お金を返すことなく死ぬまで借り続ける

ことだそうです。

これをする理由は節税。株や不動産を売るとキャピタルゲインに対して税金がかかります。課税を避けたい富裕層は資産を売却するのではなく、資産を担保に借金し、それを消費に充てます。当然、借金には税金がかかりません。資産はさらに値上がりを続けるため、さらに借金をすることが可能となります。そうして死ぬまで資産を切り崩すことなく、バランスシートを拡大させていくそうです。

日本の場合で考えてみます。例えば1億円を投資して2億円になったとします。200万円売却すると、その内のキャピタルゲイン100万円に対して20%、すなわち20万円が源泉徴収税として引かれます。手元に残る金額は180万円です。しかし2億円の資産を担保にして200万円を借りたなら、当然そこには何の税金もかかりません。200万円全てが手元に残ります。

借金には金利がつきものですが、株式の期待利回りは7%。これより高いことはないでしょう。資産を売却しないことで、売却するはずの200万を運用し続けることができ、毎年7%のペースで成長していきます。200万の借金にはそれよりはるかに低い金利がかけられます。利回り差がプラスなので資産の増加スピードは加速します。

…うむ、なるほど。借金に対する考え方が庶民とは全然違うことがわかります。借金は悪ではなく、ファイナンスのためのツールであると。


この戦略はBuy, Borrow, Dieですからまだ続きがあります。相続での節税ができるのです。アメリカの相続税の課税方式は、"Stepped up Basis(ステップアップ方式)"と呼ばれています。これは、取得価格を相続時の市場価格とするというものです。上の例では1億円を投資した後に2億円に値上がりしましたが、この後に本人が死去して子供に資産が相続された場合、資産の取得価格は1億円から2億円に更新されます。ですから相続した子供が資産を売却したとしても、税金が一切かかりません。

この件については詳しくないのですが、米国の遺産税の基礎控除は約13億円だそうで、それを下回っている間はこの戦略が使えるようです。

※バイデン大統領はこのステップアップ方式を廃止したいようなので、米国でもいつまでこの戦略が有効かはわかりません。


相続税の節税については法律に依存する部分が大きく、あくまで抜け道という位置づけで捉えるべきでしょうが、資産を売却するのではなく借金して生活費を賄うという点に関しては、運用利回りと借金利回りの差を活用したものであり、ファイナンスの原理原則に乗っ取ったものです。米国の富裕層がこのような手法で資産の運用を効率化させているということを今回知ることができて良かったです。私も今後順調に資産が増えていくなら、節税は準備しておかなければならない課題だと思っています。直接真似できるわけではないかもしれませんが、参考にしたいと思います。