ついに1ドル130円を突破しました。かつて1ドル80円の時代に投資を始めた私としては、ここまで来たかという感じです。しかも、米国に住み米国から投資している人の視点では、インフレによって体感的なリターンは目減りしています(10%のリターンでも、2%インフレしているので実質リターンは8%という意味)が、円で生活している私たちの視点、すなわち円換算では、インフレによる影響を受けるどころか、円安の恩恵を受けスーパーボーナスと言っても良い状態になっています(10%のリターン+円安による増加分。円のインフレは最近までほぼなし)。ざっくりと、この10年間の間に為替だけで+60%のリターンが出た事になります。米国株のキャピタルゲインを含まずとも、為替と配当再投資だけで資産を2倍近くに増やすことができました。

しかし、そうした経験があるからこそ、今の円安時に投資することを躊躇してしまいます。逆の事が起きるのではないかと。むしろ、購買力平価を考えるならば、逆の事(円高)の方が起きやすいとも言えます。
ドル円購買力平価

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ドル、円のインフレ率の違いから、購買力平価で見ると円高圧力がかかっています。今、1ドル130円ですが、ここ20年間の米国のインフレ、日本のデフレを考慮すると、20年前の1ドル130円とは比べ物にならないほど円安になっていると言えます。したがって、今後何らかの弾みで一気に円高に振れる可能性があります。


前置きが長くなりましたが、このような大幅な円安下でも為替には目をつぶって米国株に投資すべきでしょうか。それとも、チャンスが来るまで待つべきでしょうか。この点を本記事のテーマとして考えていきたいと思います。

・米国株の見通し予想
景気後退を予想するアナリストが増えています。インフレが制御できていないため、FRBが一層の金融引き締めをしなければならないと考えられているからです。そうすれば、景気は冷え込み不況に入ります。FRBは、いかに景気を腰折れさせずにインフレに対処するかという難しい課題に直面しています。ソフトランディングが成功すれば再び好況入り、ハードランディングなら不況といった所でしょうか。

・ドル円の見通し予想
短期的にはFRBのさらなる利上げによって円安が進む可能性がありますが、そろそろ為替介入も起きそうな雰囲気です。短期は読めませんが、ここから大幅な円安はないと予想します。中期的にはインフレの終息により金利が下がり、円高・ドル安に向かうと予想します。(長期的には上に述べたように、購買力平価説に従うと考えています)

その上で、3年後の状況を予想した表を示します。

3年後の市況予想



1)株安・円高:△不況
ソフトランディングに失敗したケース。景気後退入りしています。しかし、景気という代償を払ったおかげでインフレは沈静化し、FRBが金利を引き下げ、今より円高が進んでいると予想します。すでに投資している資産は大きな痛手を受けていますが、新規投資には最高の環境です。このシナリオが来るなら、今は円キャッシュポジションを保つのが正解と言えます。

日本ほどではありませんが、米国の潜在成長率も近年は落ちてきており、経済成長率が低い国では高インフレは持続しない可能性が高いはずです。よって、このケースの可能性が一番高いと私は思います。

2)株高・円高:○(好況)
ソフトランディングに成功したケース。株価は好調です。インフレが落ち着いたので金利を下げ、為替は円高。もしこのシナリオになるのなら、株高になる前に投資すべきですが、タイミングの見極めは難しいですね。現時点ではFRBはすぐに金利を下げられないでしょうから、今すぐ株高にはならないと思いますので、私ならとりあえず様子見します。

3)株安・円安:×(恐慌)
ソフトランディングに失敗し、インフレも退治できていない最悪のパターン。株価は大きく値下がりしていると思われます。そのため、やはりこのケースでも今投資する必要はありません。

4)株高・円安:◎(絶好調)
ソフトランディングに成功し、何らかの理由によりインフレを退治した後も為替が円安のままになったパターン。例えば他国が不況なのに米国が絶好調でドルが買われまくっている、など。このケースのみ、今投資しておくのが正解ですが、このケースが実現される可能性は低いと思います。

以上をまとめると、今後起こり得る可能性の高いケースを考えると、今は積極的に投資すべき時期ではないと思います。

結論:円キャッシュポジションをキープ


【その他メモ】

景気後退と円高は同時に来る
「有事の円買い」が今も有効かどうかはわかりませんが、景気後退と円高が来る可能性は高いです。景気後退に入れば、FRBが金融緩和を行い金利が下がります。日米の金利差が縮小すれば円安が解消され円高に向かいます。景気後退と円高が同時発生するというのは、日本から投資している我々からすれば願ってもないチャンスです。株高・円安時に売って、株安・円高時に買い戻すことができる投資家ならば、米国在住の投資家より大きな利益をあげることが可能でしょう。


金利が上がれば円安になるが、同じくらい株安になる
インフレが継続しFRBがさらに利上げを行うシナリオも考えられるでしょう。為替がさらに円安になることを見越して、株を買っておくべきでしょうか。これは割とシンプルに答えが出ていると思いますが、金利が上がると為替と同じくらい株も下落するので、この手法ではリターンが出ないないはずです。


何から利益を上げるか
投資の信念に係る部分です。市況を読まず、米国という市場の成長に賭けるのなら、今すぐ投資するのが良いと思います。そうではなく、市場が恐怖に支配され、他の人が投げ打っている時にバーゲン価格で買うことで利益を上げることを信条とするのなら待つべきなのでしょう。