『ディープバリュー投資入門~平均回帰が割安銘柄を上昇させる』を読みました。
タイトルが示すように、大幅にディスカウントされた株の上昇から利益が上げられる方法が述べられており、その根拠が平均回帰であるという事が説明されています。原題は"The Aquirer's Multiple"というもので、これは本の中で述べられている「大幅にディスカウント」された銘柄の選定基準を指します。
この本で主張されている投資法は、「ROEなどを無視し、純粋にバリュエーションが最も割安の株に投資した場合、最も高いパフォーマンスを上げられる」というもの。
「ディープバリュー」と謳っていることから、グレアム流のネットネット株投資の指南書のような印象を受けますが、この本の真のポイントは平均回帰です。この本のハイライトとも言えるグラフが以下の2つ。
1つ目は投下資本利益率(ROIC)が平均回帰する事を示したグラフです。ROICが高い優良企業も、マイナスの企業も、時間の経過とともに平均に収束していきます。高くROICが叩き出せるような優良なビジネスは競合が参入することで競争が激化し、損失を出している企業もやがてビジネス環境が改善し平均的な成績を出すようになる。この本では、平均回帰の力が非常に強いものであることが語られています。
そして、バリュー投資の有効さ・不変さを示したグラフがこちら。人々はある企業が絶好調な時、それが今後も続くように考えてしまいがちです。しかし、絶好調な企業もやがて平均回帰の力によって、並みの業績に落ち着きます。だから高いバリュエーションの株を買っても期待通りの成果は得られません。そして、人々はある企業が絶不調の時、それが今後も続くように考え、その見通しに応じたバリュエーションをつけます。しかし、ここでも平均回帰の力によって、企業の業績は想像以上に改善していきます。人々は平均回帰の力を見逃しがちであり、バリュー投資家はこのギャップから利益を上げるというわけです。
さて、この本では、かなりの章がバフェットの分析に充てられています。それはなぜか? バフェットが、高ROEかつ割安な企業に投資して成功したからであり、本書の主張する純粋なバリュエーションに基づく戦略とは矛盾するからです。
著者はこの問いに対する答えとして、バフェットは平均回帰の力に抗い、高いROEを保ち続けられる企業を見つけられる天才であり、それは常人ではできない芸当であるからだと言います。普通の人が、ある企業が本当に深いモートを持つかどうかは判断できないと著者は主張しています。
本書はそのタイトルやメインテーマからは、かなりマニアックな内容が書かれているのではと受け取られがちです。しかし実際に読んでみると、バフェットがグレアム流の手法からチャーリー・マンガーと出会って企業のブランド価値を重視するようになった経緯にかなりの紙面が割かれていたりと、バリュー投資に関する総評のような面もあり、実は多くの人が楽しめる内容だと思います。
それでいて”平均回帰”という、重要でありながらも、意外にあまり着目されていなかった考え方を真正面から取り上げており、ユニークさも併せ持った内容になっています。
バリュー投資家を自称する方にはおすすめしたい本です。
タイトルが示すように、大幅にディスカウントされた株の上昇から利益が上げられる方法が述べられており、その根拠が平均回帰であるという事が説明されています。原題は"The Aquirer's Multiple"というもので、これは本の中で述べられている「大幅にディスカウント」された銘柄の選定基準を指します。
この本で主張されている投資法は、「ROEなどを無視し、純粋にバリュエーションが最も割安の株に投資した場合、最も高いパフォーマンスを上げられる」というもの。
「ディープバリュー」と謳っていることから、グレアム流のネットネット株投資の指南書のような印象を受けますが、この本の真のポイントは平均回帰です。この本のハイライトとも言えるグラフが以下の2つ。
1つ目は投下資本利益率(ROIC)が平均回帰する事を示したグラフです。ROICが高い優良企業も、マイナスの企業も、時間の経過とともに平均に収束していきます。高くROICが叩き出せるような優良なビジネスは競合が参入することで競争が激化し、損失を出している企業もやがてビジネス環境が改善し平均的な成績を出すようになる。この本では、平均回帰の力が非常に強いものであることが語られています。
そして、バリュー投資の有効さ・不変さを示したグラフがこちら。人々はある企業が絶好調な時、それが今後も続くように考えてしまいがちです。しかし、絶好調な企業もやがて平均回帰の力によって、並みの業績に落ち着きます。だから高いバリュエーションの株を買っても期待通りの成果は得られません。そして、人々はある企業が絶不調の時、それが今後も続くように考え、その見通しに応じたバリュエーションをつけます。しかし、ここでも平均回帰の力によって、企業の業績は想像以上に改善していきます。人々は平均回帰の力を見逃しがちであり、バリュー投資家はこのギャップから利益を上げるというわけです。
さて、この本では、かなりの章がバフェットの分析に充てられています。それはなぜか? バフェットが、高ROEかつ割安な企業に投資して成功したからであり、本書の主張する純粋なバリュエーションに基づく戦略とは矛盾するからです。
著者はこの問いに対する答えとして、バフェットは平均回帰の力に抗い、高いROEを保ち続けられる企業を見つけられる天才であり、それは常人ではできない芸当であるからだと言います。普通の人が、ある企業が本当に深いモートを持つかどうかは判断できないと著者は主張しています。
本書はそのタイトルやメインテーマからは、かなりマニアックな内容が書かれているのではと受け取られがちです。しかし実際に読んでみると、バフェットがグレアム流の手法からチャーリー・マンガーと出会って企業のブランド価値を重視するようになった経緯にかなりの紙面が割かれていたりと、バリュー投資に関する総評のような面もあり、実は多くの人が楽しめる内容だと思います。
それでいて”平均回帰”という、重要でありながらも、意外にあまり着目されていなかった考え方を真正面から取り上げており、ユニークさも併せ持った内容になっています。
バリュー投資家を自称する方にはおすすめしたい本です。
コメント